Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【140字小説】#0006

部屋に黒猫が現れるようになった。部屋を隅々まで検めてみるがどこにも抜け穴はない。友人たちと見張ることにしたが、気付いたときにはみんなの輪の中に鎮座している。引き出しから拳銃を取り出し、猫めがけて六発撃ち込む。直後、こめかみからぬるぬるしたものが流れ出し、わたしは忘却のふちに沈む。

 萩原朔太郎『ウォーソン夫人の黒猫』より