【140字小説】#0045
赤いソファに深く沈み、珈琲を口に。気取られぬよう、素早く視線を隅々に走らせる。スタッコのうえに塗りつけられた、装い正しい紳士と淑女がぎこちなくカップを手にする。天井から降り注ぐ交響曲の滝が彼らのひそめきを聴き取らせない。百年前の珈琲の香りを百年後のわたしが胸の奥深くに仕舞い込む。
赤いソファに深く沈み、珈琲を口に。気取られぬよう、素早く視線を隅々に走らせる。スタッコのうえに塗りつけられた、装い正しい紳士と淑女がぎこちなくカップを手にする。天井から降り注ぐ交響曲の滝が彼らのひそめきを聴き取らせない。百年前の珈琲の香りを百年後のわたしが胸の奥深くに仕舞い込む。