Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【 本 】彼女は、なぜ江波に頼まなかったのか? ひと夏のミステリー-『愚者のエンドロール』

愚者のエンドロール (角川文庫)

 

夏休みの一日、上級生の入須冬実によって視聴覚教室に呼び集められる古典部の面々。彼女のクラスが文化祭に向け制作している映画の講評を求められる。映像には、ある廃館を舞台にした密室殺人事件が映しだされるが、それは犯人が判明する前に途切れた。すなわち、未完なのだ。何を期待され、呼び出されたかを不審がる奉太郎。入須は彼に、この映画で起こる殺人事件の真犯人と密室トリックを解き明かして欲しいと依頼する。

 

渋る奉太郎に、オブザーバーとしての参加を提案する入須。つまり、探偵役を買って出ているクラスメイトたちの推理にジャッジをくだせばいいという。好奇心を焚き付けられた千反田によって、真相究明に引き釣りこまれる古典部。彼らの前に、探偵役志願者たちがあらわれ、「迷」推理を披露する。混迷する真相。脚本を書いた少女の意図は? ホームズの小説に残された記号の意味は? かくして、ひと夏のミステリーの宴が催されます。

 

さあ、「古典部」シリーズ第二弾『愚者のエンドロール』。物語の途中、里志がみんなをタロットカードになぞらえます。すなわち、入須は「女帝」、摩耶花は「正義」、奉太郎は「力」、里志自身は「魔術師」、そしてえるちゃんが「愚者」。これは物語の先行きを暗示するヒントでしょうか。エンドロールとは、映画の最後に出てくるスタッフ・キャストの一覧表です。文字通りならば、えるちゃんが愚者ですが、果たして、その結末やいかに。

 

本作は、古典部以外の女生徒たちも魅力的。女帝というあだ名を持つ入須冬美の圧倒的存在感。恐怖感? 基本、そんな入須のメッセンジャーでしかない江波倉子。ただ、彼女が一瞬感情を露わにするシーンがあり、そこが意味深。探偵役のひとりで、エキセントリックなキャラが印象的な沢木口美崎。彼女は、『氷菓』のときにその名前がすでにあらわれていました。キャラクターが作品をまたいで登場するのって、何か楽しいですよね。

 

本シリーズは青春ミステリー。前作でも触れましたが、読み終わったあとに、何とも割り切れない余韻というか、ずばり苦味が残ります。でも、自分の学生時代を振り返ってみても、この作品に描かれる登場人物たちの葛藤ってあったなあ、と。ここでは具体的には書きませんが、だれもがそうした思いを経て、大人になります。古典部のメンバーとともに、もう一度過ぎ去りし高校生活にひたるのも楽しいですよ。若さの苦さとともに(笑)

 

次作『クドリャフカの順番』でいよいよ神高名物・文化祭が開催されますが、そこへ向けての前哨風景を描いた本作。あとがきを読むと、アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』へのオマージュとして本作が執筆されたことがわかります。わたしも過去に読みましたが、記憶の楼閣からはすっかり抜け落ちてる。再読するかね? みなさんも神高生になったつもりで、探偵役や奉太郎たちとともに推理を楽しんでみてはいかがでしょう♪

 

愚者のエンドロール (角川文庫)

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毒入りチョコレート事件【新版】 (創元推理文庫)

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