【創作のタネ】依怙地になった男のこころのうち-海音寺潮五郎「善助と万助」
【創作のタネ】以下はネタバレになります。
【あらすじ】
黒田藩お抱え3家老のひとりに強情な男がいた。母里但馬だ。殿さまの黒田長政が新任の中老(家老の補佐役)を取り立てるので、仲良くしてやってくれと命じるが、この母里だけが首を縦に振らない。過去に遺恨があるらしく、長政がどれだけ頼んでもいやだという。そこで長政は、兄貴分にあたる筆頭家老・栗山備後からも仲良くするように命令させるが、母里は一向に受けつけない。栗山・母里両者の言い争いは激しくなり、一触即発の事態に。
【創作のタネ】
なぜ母里はそこまで強情を張るのか? 中老になる男が気に入らないのは口実のひとつで、本音は別にあった。昔はスパルタ教育をしてくれた栗山がよそよそしい。母里は兄貴分の栗山に見捨てられたと落胆し、不貞腐れていたのだ。だが栗山のほうに見捨てた気持ちはない。ふたりとももう50代。いつまでもスパルタをする年齢でも立場でもないという気持ちから遠慮していたのだった。真相が分かるとふたりは和解。一種のツンデレといえる。
《理不尽な行動の背景にある、思いも寄らぬこころのすれ違い。》