Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【創作のタネ】食糧が足りなければ、食べる者を減らせばいい-藤子・F・不二雄「間引き」

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(2)定年退食

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

人口が増え、食糧事情が悪化する日本。食糧の配給制が復活する。コインロッカーの管理人は妻と弁当のことでひと悶着を起こし、イライラしながら出勤する。職場にはひとりの新聞記者が来ていた。近年流行しているコインロッカーへの捨て子の取材だった。なぜこんな事件が増加しているのか、持論を開陳する記者の前で殺傷事件や学生カップルによる捨て子事件が発生する。口減らしでロッカーに捨てるなら、焼け石に水だと管理人は笑う。

【創作のタネ】

新聞記者が明かす事件の動機とは? 食物連鎖を維持するための、個体数抑制のメカニズムに人間も巻き込まれているのではないかと記者は語る。彼は、身の回りから愛情が消滅している懸念を指摘し立ち去る。夜、妻が管理人に夜食を届けに来る。その「愛情」に感激しながら食べる夜食には青酸カリが混ぜられていた。妻は夫の死体を入れられるロッカーを探す。妻が腹を空かせている冒頭の描写がラストの裏切りの酷薄さに説得力を与える。


《仮説や法則を笑うひとみずからが、仮説や法則の奴隷となる。》