Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【140字小説】#0028

買ってきた古本をパラパラ読みしていたら、本のおしまいのほうに写真が何枚か挟み込まれていた。一昔前の格好をした若者たちが写った写真。場所はライブハウスのよう。途中で写真をめくる手が止まる。画鋲か何か、先の尖ったもので男の顔がぶつぶつに塗り潰…

【140字小説】#0027

「ふたりでそれぞれ千円の飯を食ったとするじゃない。な?そうすると、お会計はふたりで税込み二一六〇円になるだろ。ここまではいいか?そのときにさ、そいつは千円しか出さないわけよ。まあ、いいぜ一六〇円くらい。でも、そういう奴と飯食うと、本当にイ…

【140字小説】#0026

ホテルの薄暗い廊下にパンツ一枚の男が徘徊していた。ひとつずつ部屋のドアノブを開かないか確かめている。「キメてるんですかね」バイトが言う。「何かあったらすぐ警察を呼べよ」俺は意を決し男に声をかける。「ジュース買おうと思って外に出たら、部屋が…

【雑 文】これで読書感想文を書いたら教室は話題騒然(←かなり無責任)な10冊

夏休みはまだまだあるよぉ、とか言ってて、気付くと8月31日。これはオトナと言われている何千万人のひとが経験してきたことです。 世の小中高生のみなさま、くれぐれも「ご利用は計画的に」。 さて、もはや季語かというくらいに、夏休みといえば読書感想文…

【 本 】魂の行方を定める場所-『恐山』

恐山。その名は日本全国津々浦々に知れわたっていますが、実際に足を運んだことがあるひとはどれくらいいるでしょうか。 もちろん観光地ではありませんが、死者との邂逅が果たせる霊場として興味・関心を持っているひとも多いでしょう。わたしもそんなひとり…

【140字小説】#0025

遮断機が降りた。間に合わなかった。警報が金属の音を轟かす。向こうの遮断機にかつて知った顔がある。いじめに耐えかね、夏休みの校舎から飛翔した少女の影。馬鹿な、と思って凝視する。アスファルトから立ち昇る蒸気が彼女の姿を歪める。両者の間を瓦解の…

【140字小説】#0024

わたしたちは草原にレースの縁飾りがついた白いサテン地の卓布を広げた。夜空の靄、それは天の河だった。その大河から零れた流れ星が、長い尾を曳き、落ちてくる。白い卓布をたふたふと波打たせ、星がしずくを散らす。わたしたちが拾おうと近くへ寄ると、白…

【 本 】読み応えあり、短編ミステリーアンソロジー-『驚愕遊園地』

ベテランから中堅どころまで。総勢15名のミステリー作家による短編アンソロジー。お目当ては米澤穂信先生でしたが、ほかの先生がたも読ませる、読ませる!長編と違い、短編ミステリーには、登場人物たちのひととなりや事件背景を長々と語っている紙幅があり…

【140字小説】#0023

少年が急く気持ち抑えつつプレゼントを開けると、中からはズボンが出てきた。苦笑いを浮かべ、次のプレゼントを箱から取り出す。それはサッカーボールだった。すっかり笑みが引いた顔で最後のプレゼントを確認すると、そこには真新しい自転車があった。少年…

【140字小説】#0022

摩天楼頂上近くのフロアーに国籍もとりどりな人々が蝟集する。足元に広がる硝子の床を通して、碁盤目に広がる地上の街のさまが見える。街路に渦巻く大波は、ここかしこのビルに突き当たっては白い波頭を散らす。瀑布が重力に逆らい天に戻ろうとするかのよう…

【 本 】チェコ人の目に映ったオランダ-『オランダ絵図 カレル・チャペック旅行記コレクション』

ワールドカップでオランダは大健闘の三位。ただ、今回のチーム、母国ではあまり期待されていなかったみたいで(おいおい‥‥‥)、このたびの結果にオランダ国民は大喝采なんだとか。選手の心境は複雑でしょうね、嬉しいだろうけど。オランダは、ポルトガルに次…

【140字小説】#0021

ひとけのない遊園地。天蓋を覆う満月は、雲の影を地上に描く。ミラーハウスは無限の肖像を映しだし、コーヒーカップは空漠の陶酔を注ぐ。沈黙の裂け目から忍び入る笑い声が耳朶に触れる。那辺にコンセントを求めるか。それさえあれば、僕は瞬く間に世界の総…

【140字小説】#0020

(彼とのセックス最高!おまえのことはやっと金づるに仕込んだのに!負い目を与えて、別れるんでなきゃ!損するのは絶対いやよ!この修羅場を乗り切れさえすれば!働きたくないし、今更条件のいい男は振り向かない!金と自由なセックス!こんな結末、わたし…

【マンガ】不器用な神さま中学生-『かみちゅ!』

<神さまで中学生>、略して『かみちゅ!』。Amazonを見て、また新品が買えるようになったんだ!と思ったら1巻だけ。2巻は相変わらず在庫切れのようです。アニメで放映された作品ですので、わたしなんかよりも詳しいひとは大勢いらっしゃると思います。し…

【140字小説】#0019

茶虎を抱っこしてあやす。擦り寄って来た三毛を見て、お姫さまはご機嫌ですか、と顎の下をくすぐる。彼女は喉を鳴らす。雉虎が茶卓のお菓子を窺うから「こら」と注意して、わたしも微笑む。ぶちが障子の陰からあらわれたとき、まだいるのかと思った。「可愛…

【 本 】わたしの隣のディストピア-『すばらしい新世界』

アニメ『PSYCHO-PASS』、今はちょうど新編集版がやっているところで、この秋にはいよいよ第二期がスタート。一見正しいものが偽善だったり、間違っているとされていることに真実の片鱗が垣間見えたり、とても重厚なドラマが展開され、私は大好きです。ヒロイ…

【140字小説】#0018

荊棘が小径を抜けるとき、疵を濡らす腥き匂いに生命を思え。かの臭跡を辿り、駆り立てる者にこうべを巡らすこと勿れ。死がふたりを分かつときまで、か弱き手と手を白き紐帯がつなぎ止めよう。しろ百合のごと、かんばせにおもいはつのる。びろーどのごと、く…

【雑 文】ネルフ本部?いえいえ、図書館です。

時間のないかたは、せめて一番上の「シュトゥットガルト市立図書館」だけでも見てほしい!図書館に対する概念が変わります! あるストックフォトの会社さんが紹介している、世界各地のデザインに優れた図書館。ただし、これらには共通した特徴がありまして、…

【140字小説】#0017

ダイヤモンドの季節。どんなものよりも透きとおり、そして硬いの。突っかかてくる道化は返り討ちにして、一生消えない傷跡を残してやる。私を見て、誰もがため息をつき、ビロードの座を勝手に仕立てる。燃えれば、炭になるんだと嘲笑うひとがいるけれど、あ…

【140字小説】#0016

体に塗った蜂蜜を舐め取らせる。指先をねぶらせ、上腕筋に舌を這わせる。乳頭にたっぷり滴らせたそれにしゃぶりつかせる。耳たぶを玩弄した口は、眼球へ移動すると、それを愛撫し、鼻の穴、歯茎、胸元、臍、下腹部、割れ目へと着実に下降していく。蜂蜜は二…

【140字小説】#0015

携帯をいじりながら、お昼を食べる。フライドポテトを口に咥え、わたしの近況についた友人のコメントに返信を返す。隣の席に男が座る。男はトレーの上にフライドポテトをぶちまけ、山を作ると、そこへじかにケチャップとマヨネーズをかけた。赤と白とでドロ…

【マンガ】将也と硝子、ふたりの声なき者-『聲の形』

ある本に、今の若者の社会が、もっと言えば社会全体が「コミュニケーション偏重主義」に支配されているから生きにくくなっているということが書いてありました。要するに、コミュニケーション能力という物差しだけでひとの価値が決められてしまっている。勉…

【140字小説】#0014

青空なるものを見た最後のひとが今日死んだ。最後に太陽が姿を見せたのは前世紀のことだという。空は常に厚い雲に覆われているけれど、昼だって夜だってある。若干平均気温は下がったようだけれど、一年を通せば四季の寒暖だってある。太陽の痕跡がすべて毀…

【雑 文】遠い国ウクライナ

撃墜されたと覚しきマレーシア機には200人近いオランダ人が乗っていたそうで、ワールドカップでの活躍に湧いたのも束の間、国全体を一気に暗い雲が覆ってしまいました。極東の島民としては、ご冥福を祈るしかできないわけですが。ところで、その飛行機を撃墜…

【140字小説】#0013

ちらちら、そわそわ、めろめろ、もんもん、どきどき、がらがら、しくしく、めそめそ、うつうつ、いらいら、ぐらぐら、ぱらぱら、ごくごく、けらけら、げらげら、ざくざく、たらたら、どくどく、くらくら、ごとごと、きゅっきゅっ、がたんがたん、ぎりぎり、…

【140字小説】#0012

これさ、おたくで買ったんだけど、いらなくなったから返品したいんだけど、そうそう、いつだったかなあ、でも、おたくで買ったのは本当なんだよ、なに、賞味‥‥‥期限が過ぎてる、でも、吸えるだろ、こんなもん賞味期限が過ぎてたってさ、おたくで買ったんだよ…

【 本 】ミニマリズムなDEATHTOPIA-『〔少女庭国〕』

ミニマリズムという言葉をウィキると、以下のようにあります。 美術・建築・音楽などの分野で、形態や色彩を最小限度まで突き詰めようとした一連の態度を最小限主義、ミニマリズム(英: minimalism)という(ミニマリスムとも表記される)。1960年代のアメリ…

【140字小説】#0011

マクドナルドの昼下がり。とはいうものの、場所柄、店内は相も変わらず混雑している。最後のひとつにサラリーマンが座る。あとから来た男性は店内の様子を見て、席が空くのを立ったまま待つ。その次にも女性がやって来る。彼女はトレーを持ったままトイレへ…

【140字小説】#0010

澄ました顔でコーヒーとサンドイッチをひとくちずつ口にする。次に、女はバッグから取り出したハンカチで顔を覆い、小刻みに震える。くしゃみをしてるのか。ハンカチをテーブルに置くと、また平然とコーヒーとサンドイッチを口に含む。ハンカチを手に取る。…

【 本 】剣と魔法とミステリーと-『折れた竜骨』

直木賞の決定が明日に迫りました。「賞」にはいろいろ大人の事情が絡み、のちのちに物議を醸すことも少なくありませんが(メッシのMVPとかね)、それでも受賞できたかたにとっては嬉しいことこの上なし。さらには、それが売上増につながれば、作家さん自身も…