Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

2015-07-22から1日間の記事一覧

【140字小説】#0076

小机に差し向かい。勉強が苦手な彼女はもうちゃらんぽらん。うちわで風を送ってあげるとはっとして、また問題に取り組む。そのうち、消しゴムのカスがわたしのノートに飛んでくる。上目遣いに睨み、彼女の頬にそっと手のひらをあてる。真っ赤になって怒り出…

【140字小説】#0075

神殿の扉を突き破り、赤膚の闘神があらわれる。人々はどっと逃げ出すが、参道の両側は池。落ちないように気遣うと、逃げ足は鈍くなる。男がひとり池へ落ちる。4メートルはあろうかという狂王は、池から男を掴み上げると全身の皮を剥ぎ、五体を引き千切り池…

【140字小説】#0074

天井近くの小窓から差し込む真夏の陽光はどこか薄ら寒く。水槽の黄濁したアルコール溶液の中には、《物》として凝集した死体たちが浮遊する。水槽の一等底には、十五年も前から全身を強ばらせ、沈殿する《物》もある。死体を新しい水槽へ移し替える作業に従…