Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【140字小説】#0056

道の両側を埋め尽くす土産物屋。色とりどりの制服とバックパックを身につけた少女たちが往来を闊歩する。煎餅とお香と茶器と饅頭と簪と手拭と石鹸とソフトクリームが交錯する網目を彼女たちは軽やかに練り歩く。今も百年前も同じ光景が繰り広げられたのだろ…

【140字小説】#0055

客がわたしひとりしかいない喫茶。珈琲を飲む。壁には昇竜が紺地に黄金の飛沫を散らす。店の奥と手前に置かれた背高ノッポのスピーカーから流れる不規則なテンポの音楽。同じメロディーであるはずなのに、なぜかずれて聴こえる。あるいは、来し方と行く末が…

【140字小説】#0054

飴の模様はぐるぐる渦巻き。伽羅倶梨幻燈の放つ光の粒もぐるぐる渦巻き。花は風に散り、集められ、ぐるぐる渦巻き。風に吸いあげられた花びらが頭のうえから降りそそぐ。たもとを広げ、受けとめた花びらを着物の柄のなかに溶け込ます。「姉さん、うちもそな…

【雑 文】ドイツ語はなぜカッコイイのか、思いつきで書き始めたら2000字を超えちまったよ

過去に書いた「ネーミング」に関する本の紹介記事が好評でしたので、今回はわたしが学習したことのあるドイツ語について、なぜドイツ語をカッコよく感じるのか、多分に偏見を駆使して解説しました。 【 本 】ドイツ語で必殺技を作る-『幻想世界11ヶ国語 ネ…

【140字小説】#0053

窓から吹き込む花嵐。靄がかる遠くの野辺も花吐息。ガラスの器には色とりどりの飴玉がぎっしり詰まる。わたしは一番うえにある花色を指先で摘むと、ぽんと口のなかへほうりこむ。途端、花の色が唇を染め、花の薫りが胸いっぱいに広がる。ここに居る花を愛で…

【140字小説】#0052

狭い石塀の凹凸を足の裏に感じつつ、すたすた歩く。両腕はバランスをとるためにすっと高らかに。わたしとパラレルに空にはひこうき雲。線路は続くよ、どこまでも……なんて歌がつい口をつく。一歩踏み出すごとにこころだけが加速していく。もう少しでわたしも…

【雑 文】こんなかたちのディストピアはいかが5冊+1

衣食住に満ち足り、無用な争いやストレスもなく、ひとりひとりがその人格を尊重され、尊厳をもって一生を終える。古来、ひとはそうした申し分なき世界をユートピア、理想郷と呼んできました。ですが、その陰に大勢のひとの犠牲が隠蔽されているのだとしたら…

【140字小説】#0051

川縁に等間隔で並ぶ恋人の影。ときおり吹く風が鳴らす草のさざめき、彼らの真綿にくるんだかそけきさざめき、あたりは生命のメタファーで溢れている。わたしは耳に心地よいノイズの中をクロールですいすい泳ぐ。眼の前の草むらから一斉に蛍が飛び立つ。音と…

【140字小説】#0050

道はゆるやかに蛇行しているが、遠く彼方まで見通せる。太陽の斥力に潰され、無菌状態の道はどこまでも、徹底して不在だ。空気まで燃焼したかのように、体から吹き出る水蒸気は瞬く間に霧散する。道端に生い茂る向日葵たちが、まるで首を吊ったひとのように…

【雑 文】創作ラブなひとにぜひお伝えしたい一冊♪

今日は創作が大好きなひとに一冊の本をご紹介したいと思います。 それは、シド・フィールド『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック』です。まずはわたしがこの本を知るに至った経緯を簡単にご説明しますね。 素晴らしい映画を書くためにあ…

【雑 文】アメリカ中西部を浮かびあがらせる物語たち

アメリカ中西部と言われても、日本に生まれ育ったわたしには土地勘がありません。太平洋、大西洋に面した沿岸の地名ならいくらか心覚えがあるものの、だだっ広い内陸については白地図も同然で記憶の砂漠だけがどこまでも広がります。 「中西部」という字面を…