Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【雑 文】スティーヴン・キングを読み尽くすわたしがオススメする5作品

レギュレイターズ〈上〉 (新潮文庫)

 

スティーヴン・キングならほとんど読み尽くしたわたし。

スタンド・バイ・ミー』や『ショーシャンクの空に』『ミスト』なんかが映画作品として高い評価を得ています。
実際のところ、キングの作品のほとんどは映像化されています。ところが、その出来があまりにひどくて怒るよりも吹き出してしまうものすら。

ファンからすると是非とも原作を読んでもらいたい!

今回、このなかには入れませんでしたが『ペット・セマタリー』なんか、そのタイトルからして切ない。英語の「墓地」を正しくカタカナ表記すると「セメタリー」なのですが、なぜ「セマタリー」? これが物語のクライマックスと大いに関係してきます。

それにこれも今回は入れなかったのですが、キングの初期短編が実は何気に面白いです。こちらはいずれまたご紹介できればと思います。

それでは本日お届けする5作品は以下の通り!

 

『レギュレイターズ』

これは「リチャード・バックマン」のペンネームで発表された作品。キングは自分の芸風でない作品を発表するときにこの名前を用います。キング名義で執筆した『デスペレイション』とともに刊行、両作品の登場人物の名前を同じにするというイタズラをしています。ストーリーはまったく別物ですが。子供向けテレビ番組に登場するキャラクターたちが大挙して殺しにやってくるという、シッチャカメッチャカな物語。町のひと区画がまるまる戦場になり、壮絶な戦いが繰り広げられます。物語的には『デスペレイション』のほうが正統ホラーなのですが、このあまりにすっ飛んだ設定が本当に楽しくて。余裕があるひとは『デスペレイション』も是非。 

レギュレイターズ〈上〉 (新潮文庫)

レギュレイターズ〈上〉 (新潮文庫)

 

  

『ザ・スタンド』

致死率99%というウイルスが研究所から漏出します。しかし、物語はパンデミックと人類との対決を描いたものではありません。もっと普遍的な「善」と「悪」、「光」と「闇」との死闘。ウイルスから生き残ったわずかな人類が、マザー・アバゲイルとランドルフ・フラッグのもとにそれぞれ集います。両者のあいだに共存共栄はなく、どちらか一方が生き残るしか道は選べません。読みようによっては中国の『水滸伝』っぽい。銘々の信念にしたがって別れたひとびとの戦う姿に、人間の業を感じます。「人類の本当の敵は人類だった」みたいな。これをデビューから長編四作目で書いたというのが信じられないほどの重厚感。 

ザ・スタンド 1 (文春文庫)

ザ・スタンド 1 (文春文庫)

 

  

『It』

町を徘徊する殺人ピエロ(ジョン・ゲイシーがモデル)というモチーフも秀逸ながら、少年少女時代の仲間がもういちど集まり、過去の負債にかたをつけるというストーリーが胸熱。『スタンド・バイ・ミー』にはホラー要素がありませんでしたが、こちらは300パーセントホラー小説。ホラー版『スタンド・バイ・ミー』といって差し支えありません。ひとの憎悪と悪意という「それ(It)」としか名付けがたきものが主人公たちを脅かします。そして、「それ」との対決が終わったとき、もうひとつの物語もまた終わりを告げる。映画なら『スタンド・バイ・ミー』ですが、原作ならこちらの『It』を断然オススメします。

IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈1〉 (文春文庫)

 

  

『ゴールデン・ボーイ』

『Different Seasons』という四季をモチーフにした中編集の「夏」の作品がこちら。ちなみに『スタンド・バイ・ミー』は同書の「秋」になります。ナチスホロコーストに傾倒するという中二病を発症した少年。ある日、彼はかつて強制収容所の所長をやっていた元ナチスの男を偶然発見。ナチスだった事実を公表しない代わりに、強制収容所の話をしろと男に迫ります。ところが、少年はホロコーストの狂気に取り憑かれるようになり、その責任を男に押しつけます。男を憎み、なんとかして殺そうとする少年。おとなしく殺されるわけにはいかない元ナチスの男。彼らの死闘を決する日が次第に近づいてきます。中二病をこじらせると大変です?! 

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

 

 

『クージョ』

狂犬病にかかったセント・バーナードと炎天下の故障車に閉じ込められたお母さんと子供の話。今は古書でないと入手できません。おそらく結末に問題があるのと、セント・バーナードに対する偏見を助長するだの動物虐待だの、動物愛護協会あたりからクレームがついたんじゃないでしょうか(適当)。最初に書いたように、この物語は車に閉じ込められた母子と狂犬、それだけの話です。ところが、そのワンシーンを何百ページも引っ張る、引っ張る。いわゆる密室劇ですね。これは並大抵の技量ではないと、わたしは心底感心してしまいました。本当に物語を構築するちからを持っていないと、これだけのものは書けません。さすが、キング! 

クージョ (新潮文庫)

クージョ (新潮文庫)