【140字小説】#0060
彫刻刀を傾け、あなたの似姿を机に刻む。柔らかな目元はより柔らかく、高き鼻梁はより高く。カールした繊細な髪をまっすぐの刃で描くのは難しい。最後の仕上げに、わたしは人差し指の先を薄く一すじ切る。切り口から溢れ出す血を完成した肖像に流し込むと、朱に染まったあなたは口元に微笑を浮かべる。
彫刻刀を傾け、あなたの似姿を机に刻む。柔らかな目元はより柔らかく、高き鼻梁はより高く。カールした繊細な髪をまっすぐの刃で描くのは難しい。最後の仕上げに、わたしは人差し指の先を薄く一すじ切る。切り口から溢れ出す血を完成した肖像に流し込むと、朱に染まったあなたは口元に微笑を浮かべる。