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Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【 本 】愉快犯?確信犯?ふざけたタイトル、シリアスな物語-『連続殺人鬼 カエル男』

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

 

 マンションの高層階から蓑虫のようにぶらさがる女。でも、それは口から鼻の横へかけて貫通するようにフックでぶらさげられています。こんな衝撃的なシーンから『連続殺人鬼 カエル男』の物語は始まります。死体のそばには警察を挑発するとも、犯人の自己顕示欲のあらわれともいえるメモ。生きたカエルを木から吊りさげて遊んだことが綴られた、すべて平仮名のメモ。ここから犯人はカエル男と呼ばれるようになります。


 犯行はこれひとつにとどまりません。目次にあるように「吊るす」から「潰す」「解剖する」と事件は続きます。その目的も人間性も感じられない連続殺人に世間は何とか理解のできるストーリーを組み立てようとします。しかし、そうした思惑をあざ笑うように「焼く」が起きたとき、地域社会の不安は臨界点を超え、ついに暴動へと発展。犯人らしき人物は見え隠れしますが、ラストまで二転三転する物語はどこへ向かうのか。


 子供の頃心に傷を負った経験を持ち、ともすると軽薄な感じすらする古手川刑事とそれを上手いこと御しながらこきつかうベテラン渡瀬刑事のコンビが、陰惨な物語のなかの「理性」で救われます。とくに目立った活躍こそないのに渡瀬刑事の頼れる感はハンパないです。ビリー・ホリデイベートーヴェンの知識をちょろちょろ披露し、実は深い教養をもったひとであることをさり気なく示すところなども、タマランです、はい。


 本作はもともと『災厄の季節』というタイトルだったそうですが、刊行されるにあたって『カエル男』になりました。ナゼ?! あまりにひとを食ったタイトル、カエルが血のしたたる包丁を握った小馬鹿にした表紙。でも、読み始めたらわたしはほぼノンストップでした。猟奇的な雰囲気、アクション(と言っていいかな?)、そして無理なく二転三転していくミステリーとしての醍醐味。この冬の休暇中の思いがけない、エンタメでした!


 ミステリー好きにはもちろん薦めますが、流血多量のエグいシーンが多いので、そういうものが絶対に受け付けないひとは読まないほうがいいです。トラウマになるかも。物語を盛り上げる材料でしかないのかもしれませんが、ある社会問題を最後に喚起しているので、「トリックだけ」に重きを置いたミステリーが嫌というひともどうぞ。


 作者の中山七里は本作よりもむしろ『さよならドビュッシー』でのほうが知名度があるかもしれませんね。映画にもなったし。本作は比較的デビューに近いので荒削りな感じがありますが、それが物語のB級っぽい雰囲気を高めていますし、ラストまで読者を引っ張っていく牽引力にもなっています。人間をオモチャのように扱うカエル男の目的や被害者たちをつなぐ連環は一体何なのか?ハラハラしながら、一気読みさせられます!

  

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)