Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【創作のタネ】家族との距離感が難しい、高齢化社会に一石を投ずる-藤子・F・不二雄「じじぬき」

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1) ミノタウロスの皿

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

妻に先立たれたお爺さんのガンさんは、息子一家のなかで煙たがられている。食事がなかったり、別居を示唆されたり。小さな嫌がらせにガンさんもまた依怙地になる。あるとき、孫の嘘が引き起こした騒動で、彼と家族のあいだに決定的な亀裂が入る。雨のなか、あてつけで釣りに行くと、体調を崩し死んでしまう。しかしそれは彼を気の毒に思う妻が死亡を繰り上げたためだった。悲しむ一家のようすを見たガンさんは生き返ることを決意する。

【創作のタネ】

生き返ったガンさんは幸せだったか? 生き返ってからしばらくは、平穏無事な日常が過ぎる。しかしガンさんの立場は次第に元の木阿弥へ。ついには、息子に対して養育費の返還訴訟を起こすところまで家族関係はこじれてしまう。ところが、生き返ってからここまでのようすはすべて夢によるシミュレーションだった。ガンさんは生き返りを取り消し、墓参りをしてくれる家族の姿を天国から見守るのだった。ひとの表層的な「善意」を暴く。


《良かれと思った改善が悪しきを招く、悪しかれと思った現状維持が結果的に最適。》