Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

2014-01-01から1年間の記事一覧

【140字小説】#0049

暑いね。今日、世界が壊れていくんだって。ほら、天蓋の星々も崩れて地上に全部降り注いできそう。苺ミルクのジュースはこんなに甘いのに、あなたの齧る氷菓はそんなに涼しげな音をたてるのに。この夕焼けの空は今宵一杯。十六年しかなかったけれど、あなた…

【140字小説】#0048

長い石段を駆け登る、駆け下りる。段々に打ち付けられる下駄の朴歯の音が四方八方へ乱れ飛ぶ。幽霊たちにぶつからぬよう、彼らの隙間で体を捻り、裾をはためかせ、ときおり石段に手をつくようにまろぶ。狐の面をつけた彼女が狐のようにしっぽを波打たせ、お…

【140字小説】#0047

手のラムネの瓶が汗をかく。神社の境内にずらりと並んだ古書を冷やかして見て歩く。一冊一冊の想念が次の継承者をじっと待ち構え、薄目で息を潜めている。この炎天下に木陰があるぶんだけましにせよ、ご苦労さまです。瓶をふと見ると、口をつけてもいないそ…

【140字小説】#0046

周囲を取り巻く山々へ文字の形に火が灯される。点火のたびに、病院の屋上に見学で集った人々の口から歓声があがった。ある山の順番に来たとき、それが阿鼻叫喚へと変わる。どんな文字が描かれたものか、ひとの背に隠れたわたしには見えない。巨大な翼を持つ…

【140字小説】#0045

赤いソファに深く沈み、珈琲を口に。気取られぬよう、素早く視線を隅々に走らせる。スタッコのうえに塗りつけられた、装い正しい紳士と淑女がぎこちなくカップを手にする。天井から降り注ぐ交響曲の滝が彼らのひそめきを聴き取らせない。百年前の珈琲の香り…

【雑 文】物語をつむぐ五人の登場人物

わたしが物語の構造を整理するときに用いる方法をご紹介します。 この手のものは、おそらく神話学のジョセフ・キャンベルや構造主義方面のえらい先生がたがとっくに研究していることだと思います。 ただ、彼らの著作を読むと、とにかく難解ですし、そもそも…

【140字小説】#0044

眼下に広がる町並み。どこまでも高い建物はなく、彼方に山の影がおぼろに浮かぶ。切り立つ崖のあいだを抜けたところにこの寺はある。町の東北、鬼門に在所し、永に渡り町を守り続けてきたという。今も足元からかたちを持たぬものたちの息吹が微弱な電流のよ…

【140字小説】#0043

踏切を越え、しばらく行ったところにその本屋はあった。おもての通りにひとの往返はないのに、店の中はとても賑わっている。棚に並ぶ本はどれも見たことがない。何て胸はずむ本屋だろう。そうか。ここへ入るひとはいても、出ていくひとはいないのだ。私は棚…

【140字小説】#0042

八月のラプソディに誘われ歩いていると、いつの間にか丘の上に出ました。夜空にはクモの巣状に連なった星々が燦燦とさざめいております。私のあとを追ってきたのっぽとちびのお付きが、ここは天国、あそこは地獄と言います。このうえなく美しいのにと不思議…

【 本 】今日、あなたの頭上に振りかかるかもしれない悪夢-『夏の災厄』

それはインドネシア近くの島でひっそりと始まった。兆候は少し前からあった。鳥の鳴き声が島から消え、やがてそれと入れ代わるように奇病があらわれる。子供たちは、島を訪れた医師たちによってどこかへ連れ去られていた。 閉めきった家々の戸口から、鼻をつ…

【140字小説】#0041

小学生の頃、ここの墓地でよく遊んだんだ。子供には、広場と変わらないからね。あそこに銀杏の樹が見える? 小学生くらいの子供ならすっぽり全身を隠せるウロがあってね。日本の電気会社がそこのウロに機密情報を隠し、後日ソ連のスパイがそれを回収していた…

【 本 】真夏の夜の百物語より8編-『百物語』

今、百物語を行うと、どんな物語が集まるのだろう。 怪談には、 目に見える現象を科学的に説明できないから、怪異で辻褄を合わす 正論として語ると押し付けがましくなるので、怪異を用いた因果話として語る 風説・風評に尾ひれ、例えば因果関係であったり擬…

【140字小説】#0040

ほどほどに暖かいし、汚れてるけど、空気や水もある。ひとの体から出る食べ物の成れの果てを始めとして、あらゆる養分が流れ着く。科学薬品もチャンポンだから、環境適応能力でいろんな免疫を持ってるんだろうね。そんな生き物がシンクの排水口からぬらぬら…

【雑 文】落語が創作に役立つ3つのポイント

最近、立て続けに落語を鑑賞してきました!これまでも落語は好きだったのですが、テレビ番組やCDで聞く程度でした。しかし、やはり生は違いますね!ひとがひとの目の前で芸を見せる。現代のようにメディアが発達し、いつでも、どこでも、何度でも再生可能な…

【140字小説】#0039

初めて部屋で幽霊を見たときはやっぱりびっくりしたよ。でも、いつの間にか室内をうろうろさまよう姿は風景になっていた。私が話しかけると「うっ」とか「あ…」とか返事をしてくれるんだ。声を出せるなら、たまには何か話しかけてくれてもいいのにさ。私は朝…

【 本 】あなたを縛るものから解き放つ簡単なこころみ-『弱いつながり 検索ワードを探す旅』

哲学者の東浩紀先生にしては珍しいタイプの本だというので、ツイッターで話題になっていた。 『弱いつながり』 「弱い」というキーワード。以前に松岡正剛『フラジャイル』を読んで以来、気になっていた言葉。世界は「強さ」を求める。経済も、政治も、軍事…

【140字小説】#0038

この坂で転ぶと三年のうちに死ぬんだって。子供のとき、坂の途中の黒いアパート、あそこに死神がいると勝手に信じて、私、前を通るときはいつも駆け抜けてたんだ。でも、あるとき二階の窓を見上げたら、磨り硝子越しにひとの顔が見えたの。男か女かも分から…

【雑 文】ビジネス性格診断で唯ちゃんたちを分析-『けいおん!』

FFS理論で軽音部を分析 FFS理論という性格診断がある。会社でこのテストを受けたひともいるだろう。実は、これが『けいおん!』にあてはまるのではないか、という話をしてみたい。このテストを受けると、性格は以下の4タイプに分類される。軽音部のメ…

【140字小説】#0037

川べりのレストランで転勤になるボクにささやかな歓送会。友人たちは妻の同伴を望んだ。会が開き、駅へ移動する途中で妻が「熱がある」と言う。手近なベンチに腰掛け、休む。川を挟んで、さっきのレストランが見えた。川面に店の明かりが反射し、ゆらめく。…

【140字小説】#0036

昔の映画館は便所から小便の匂いが漂ってきてさ。もっと場末って感じだったよ。何百席もある立派なのはほんのひとにぎり。何してるかわかんない奴らが日がな一日時間を潰していたっけな。そんな映画館の便所から女の絞殺死体が見つかったんだよ。いやなに、…

【雑 文】「本好きへの100の質問」に答えました!

トピック「本好き」について 変な時間に始めたので、寝る時間をはるかにオーバー。でも、明日の朝には「無理してやる必要もないか」といきなり冷静になる予感。一気呵成に答えてみましたよ。勢いが必要だよね。でも、楽しかった♪ 001. 本が好きな理由を教え…

【140字小説】#0035

地面に止まれって書いてあるから、ここに止まろ。いいじゃん、そんなに急いで帰らなくても。もう少しして、太陽が山の端に差し掛かると、この見渡すかぎりの田園が真っ赤になるんだよ。空も同じ。世界が一色に染まるとしたら何色がいい?わたしは断然赤だな…

【 本 】ひとを忘れた会社に明日はない-『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする』

結論はひとつ。 会社はひとでできている。 ひとにテコ入れしよう。 ツールとしてのグラフやチャートをいくら用いても会社に変化は起こせない。 変化がないどころか、多分に抵抗を誘発し、改悪へ転がる。 ひとにテコ入れするといっても、さほど難しいことが必…

【140字小説】#0034

頬の膨らみにはうっすら産毛があった。おくれ毛は清らか。いつも姿勢よく、黒板を見つめ、ノートをとるときも、僕みたいに背中を丸めない。問題を解きあぐねたときにだけ、少し腰をずらし、背もたれに軽く背を当てる。僕は彼女を後ろから見つめるだけだった…

【 本 】虐殺の村オラドゥールに見る戦争の無意味さ-『失われた土曜日』

パレスチナの惨状を目の当たりにして、イスラエル憎しの思いを募らせている日本人は多いでしょう。 戦争行為が、合理的で、平和的で、理性的であったことなどありはしません。こと、生活者目線においては。 今に語り伝えられる、戦争にまつわるたくさんの悲…

【140字小説】#0033

どうしてそんな風に軽々しく、自分が飲んだペットボトルを俺に差し出すんだ。気持ち悪いとか思わない?いや、俺がじゃなくて、お前が。俺、クラスの女子に嫌われてるし。普通に接してくれるのお前だけだし、お前には気持ち悪いって思われたくないし。「何し…

【 本 】「キレるひと」「モンスター」の精神構造-『承認をめぐる病』

前にサービス業で働いていたときの先輩、一緒に居酒屋へ行くと、普段の接客で見せる愛想良さが豹変。 「料理、遅いんだけど。さっさと持ってこいよ」「皿、下げて、早く持って行けよ」 わたしはあまりの恥ずかしさと店員さんに対する申し訳なさで俯いていま…

【140字小説】#0032

砂の城が崩れるように、あなたの返信はどんどん短く、つれなく、間遠になっていく。それはもはや言葉ではなくて、記号だった。解読するほどの裏の意味もないのだろう。記号には信号を返すだけ。わたしの心を占めているのは、点と線。匂いも暖かさも厚みも音…

【マンガ】『ゆるゆり』から飛び出しました-『大室家』

美味しいものは最後に残すタイプです。 今日あたり2巻が出るので、ようやく1巻を手にするというおおたわけ。だって、さっさと読んじゃうと、次が出るまでが苦痛なんだモン‥‥‥。 今さらそちらの向きには解説も不要だとは思いますが、端的に。 『ゆるゆり』…

【 本 】あなたを苦しめる「目標」という名の呪縛???-『「待つ」ということ』

最近、ものすごく疑問に思っていることがあるのですよ。 それは、目標を立てることの是非。 現代人は生まれてからずっと、目標を立て、それをクリアーするための努力する生き方をあたりまえだと思っています。 あたりまえというか、むしろ「善」とすら? 次…