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Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【 本 】うでとでぶどっちがいい、目眩がする究極の選択-『デブを捨てに』

デブを捨てに

 

『独白するユニバーサル横メルカトル』

『いま、殺りにゆきます』

ミサイルマン

『或るろくでなしの死』……

平山夢明さんのタイトル、気が狂っているのにソリッドな感じが好きです。
いえいえ、気が狂っている「から」ソリッドなのかな?

最新作『デブを捨てに』。

短篇集です。

このタイトルもまったくもって意味不明なのですが、併録されている作品も

「いんちき小僧」
「マミーボコボコ」
「顔が不自由で素敵な売女」

どれも神経がささくれだってきそうですね。

 

表題作「デブを捨てに」。

借金の返済を迫られている主人公がその筋のひとたちに質問されます。
「うでとでぶどっちがいい」
主人公は以前にも借金の返済がらみで腕を叩き折られているので、咄嗟に「デブで」と答えます。

この一言から喜劇と狂気の旅が始まります。
借金の元締めは、愛人が昔産んだ子供が見苦しいくらいのデブになり物笑いの種だから始末しろといいいます。
主人公が手をくだすのではなく、ある場所へ連れて行けばそこに専門の処分屋がいるので彼に引き渡せとのこと。
文字通り、デブを捨てに行かないといけません。

万が一、ヘマしたら過去に叩き折った腕を、しかもその同じ場所をもう一度へし折ると……。

 

出だしからクライマックスです。
この有無を言わせない展開が平山節の特徴だったりします。

今回も平山さんのセリフ回しはイカしてます。

「最低の父親にはタマなんか要らないさぁ」
「げぇ? なんで? やめるべ! ちゃんと話したべぇジャンか!」
なんくるないなんくるないさぁ」(いんちき小僧)

 

「俺は嘘は吐いていない。嘘は吐かん。俺は嘘は吐かん」
「嘘だろうがよ! 稼ぎもねえのに餓鬼ばっかりこさえて、まともじゃねえだろ、こんな家。どこの世界にこんなわけわかんねえ家があんだよ!」
「アフリカでは普通だ」
「此処は日本だろうがよ!」(マミーボコボコ)

 

「禿の癖に怪我しやがって、偉そうに怒るな! 禿はケガねえんだぞ!」
「あんた、本当に性根が曲がってるね」
「おっほほほ」(顔が不自由で素敵な売女)

 

「し、死んじゃふよほぉ!」
「捕まっちまうぞ! 死ぬなら後でたっぷり死ね! 今は死ぬ気で走れ!」(デブを捨てに)

わたしは平山さんが編纂した怪談集も好きですが、オリジナル作品のこうしたセリフ回しに惹かれ、作品を読んでいるところが多分にあります。

 

相変わらず暴力描写のボルテージは高いので、その方面に耐性のないひとにはオススメしません。
ただ、平山さんのダークテンションはいろいろ読むわたしからすると毎度感心します。胸焼けするようなシーンを人寄せパンダ的に使った作品が世間にはありますが、そういう場合はやっぱり全体を通じてちぐはぐです。そこへいくと彼はトーンにブレがありません。疾走しています。

 

表題作の話に戻りますが、デブを捨てに行くことになった主人公。
でも、目的地へすぐ着いたのでは物語になりません。
途中にはいろいろすったもんだがあり、そのなかで「デブ」が実は憎めない奴であることも分かり……この続きが気になる方はぜひ本編をお読みください♪
物語の新境地を開拓したいひとなんかにもオススメかも???

 

デブを捨てに

デブを捨てに

 
独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

 
いま、殺(や)りにゆきます―RE‐DUX (光文社文庫)

いま、殺(や)りにゆきます―RE‐DUX (光文社文庫)

 
ミサイルマン (光文社文庫)

ミサイルマン (光文社文庫)