【雑 文】暗記に王道はないけれど、覇道はあるよ的な、9箇条
メール、Facebook、Twitter、ニュースサイト……。
パソコンを立ち上げたり、スマホにアクセスした途端、情報がわんさか入ってきます。
これらの情報を取捨選択するだけでも相応の時間が必要になります。でも、ふと立ち止まって考えたとき、情報はわたしのなかをすり抜けているだけではないかという不安を感じます。取捨選択だけに追われていて、情報をちっとも活用できていない。
わたし自身が PC やスマホの端末になってしまった感覚。
情報の多さに反比例して、どんどん自分が空っぽになっていく感覚。
それで、日常的にわたしは暗記を欠かさないようにしています。
暗記したものだけが、いざというときに役立つからです。
とはいうものの、人間の体力・集中力といったリソースにはおのずから限界がある。ですから、暗記を効率的に行うため、わたしが心掛けていることを今日は少しだけご紹介。
- 記憶の公式:強度 × 時間
まず暗記の大前提として、記憶が「インパクト × 時間」によって成り立つことを理解しましょう。
英単語はひたすら繰り返さないと覚えられないのに「神々の義眼」とかしょーもないことは一発で覚えてしまう。
完璧な記憶を「100」という数値であらわすとき、前者が「インパクト:1 × 時間:100」であるのに対し、後者は「インパクト:100 × 時間:1」なのです。
わたしたちは、この「インパクト:1」であるものをいかに頭に叩き込むかで日々苦労しています。 - 条件反射はだめ
暗記するときは、10個なり20個なりまとまった数の情報を頭に放り込み、15秒カウントしてからアウトプットするようにしてみましょう。
というのも、15秒以下で行うアウトプットの場合、短期記憶で処理されている可能性があるからです。
記憶には、短期記憶と長期記憶があります。短期記憶は、15~30秒間記憶を維持できます。ですから、覚えたそばからノートへ書き出すアウトプットなどの場合、それは暗記というより、書き写す作業になっている可能性があります。無論、暗記で重視されるのは長期記憶。短期記憶の最下限である15秒を越えて記憶が維持されているなら、それは長期記憶へ移行しつつあると見なせます。 - 流しはだめ
「2」とややかぶりますが、暗記には、覚えようという意志が不可欠。
手で書く方法に一定の効果があるのを認めるにやぶさかではありませんが、これを行なっているひとに多いのは、覚えるという頭の負担を手書きという労働へすり替えているパターン。アタマ的には、頭を使うより無心に手を動かしているほうがずっと楽なのです、あたりまえのことですが(笑)確実に覚えられたかを確認するための手書きは無問題ですよ! その点は誤解なく。
従って、「ナンチャラくんの流すだけ英会話」もそこに聴き取ろうという意志がないかぎり、何万時間やっても決してヒアリングは上達しません。 - 記憶は「点」よりも「線」
「エララ、イオカステ、アナンケ、ムネーメ、メガクリテ……」と細切れになった情報を与えられると、ひとは途方に暮れてしまいます。しかし、「木星の衛星」だとその情報の背後を貫く線が見つかると納得できる。この「途方に暮れる」「納得できる」は、そのまま暗記の労力の違いになってきます。
ひとの頭には情報を構造化させる働きがあります。とはいえ、まったく手探りで組み立てるのと、組み立てマニュアルがあるのとでは、その負担の大小は比較するまでもありません。いかに覚えたいことの共通点を見つけるか。がむしゃらに詰め込む前に、こうした準備運動が暗記には大いに役に立ちます。 - 記憶は「点」よりも「塊」
これは「4」から導かれることですが、記憶は「塊」で覚えるべし。
とにかくバラバラにものを覚えるほど、労多くして功少ないものはありません。うざくなるので細かくは書きませんがマジカルナンバーは暗記の基本です。 - 記憶は色鮮やかに、メリハリをつけて
暗記すべき情報はカラフルに、大きさを(変えられるなら)変えて。
教科書にマーカーで印をつけるのは、目立たせるためですが、それが結局は暗記の助けになります。
ひとの記憶を阻む敵に「単調さ」があります。同じ大きさの、モノクロの文字が延々と続く、六法全書や円周率のようなものを丸覚えすることほど、ひとの記憶に負担を強いるものはありません。
歌詞は忘れても、メロディは忘れませんよね? セリフは忘れても、『ゆるゆり』のあの子の顔のことは忘れませんよね?
色やかたち、メリハリは、ひとの記憶を助けます。これは、すなわち、感情は記憶を促進するという意味でもあります。 - 記憶の宮殿
暗記には、同じノート、同じ教科書、同じ参考書を繰り返し使いましょう。ウェブは厳禁!
大昔のひとは、頭のなかに宮殿を組み立て、そこに情報を配置して暗記しました。あたかも美術品のように。トマス・ハリス『ハンニバル』では、ハンニバル・レクター博士が「記憶の宮殿」のなかから必要な記憶を拾い出すようすを描いています。自分の部屋のなかにあるものを思い出すとき、バラバラに思い浮かべるのではなく、「部屋の右奥には……正面には……」とやるのと同じです。
ひとは情報を頭のなかで擬似空間的に配列しています。リアルな本は、印刷された情報の位置が平面的にも立体的にも変わらないため、記憶に適しています。
ところが、電子書籍やウェブの場合、レイアウトも変わりますし、情報が展開するのは奥行きのないモニターの上だけに限られますので、インプットした情報がひとの頭に定着しにくいという危うさを孕みます。
文明の利器にも、デメリットがあるのは当然です。 - 覚えられないことを責めるより、覚えられることを褒めてあげよう
と、いろいろテクニックを挙げてきましたが、ひとにはやはりスランプがある。どうにも覚えられなかったり、どうにも集中できなかったり。暗記の最大の敵は、自分の心の動揺です。自分を責めるようなことは、一番やってはならないあやまち。そういうときは、できない自分を責めるのではなく、そういう状態のなかでひとつでもふたつでも覚えられた自分を褒めましょう。
それから、スランプは絶不調のときがスランプなのではなく、ちょっと楽しようかなと思ったときがスランプの始まり。それを知っておくと、自分のコンディションについてかなり冷静になれますよ! - とにかくその情報に触れる
最後に、きわめて当たり前のことを書けば、暗記しているひとは、常にその情報に触れています。サヴァン症候群でもない限り、一発で頭に叩き込むなんてのは、まずもって不可能です。
毎夜『艦これ』にいそしんでいるみなさん、何年前かの今日、こんな膨大な量の艦船名を覚えられると、誰に想像ができたでしょう。
つまり、そういうことです(笑)