Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【 本 】その気持ちの伝え方、もっとこう…あるだろう!!-『感情類語辞典』

///文章を書くにあたり、大事なのは、
1に、わかり易さ、
2に、わかり易さ、
3、4がなくて、
5に、ボキャブラリー
だと個人的には思ってます。

///わかり易い文章ってのもたいがい加減が難しく、わかり易すぎて幼稚だったり、馬鹿丁寧すぎてくどかったり。逆に、このくらいで意味通じるっしょと端折ったら、あとから自分で読んでも意味がわかりま千年みたいな。このあたりの緩急、濃淡の加減はとにかくたくさん書いて推敲するだけでしょうナ。

///「書くこと」を趣味にしているひとが苦しむボキャブラリーの問題。単語数が絶対的に不足しているケースと言い回しのバリエーションが欠乏しているケースがある。

///前者。「赤」をなんでもかんでも「赤、赤、赤、赤……」と表現するんじゃ、どんだけおまえは共産党好きなんだと、ウフ、冗談♪ 暗い赤から明るい赤まで順番に並べると〈絳・朱・赤・丹・紅〉。X Japanの『紅』が、いちばん明るい赤、つまり鮮血を意味していることがわかるでしょ? ちなみに「絳」は〈あか/コウ〉と読みます。漢字検定1級の字ですから、知らなくてもノープロブレム。

///後者。単語のうえを行って厄介なのが言い回しのバリエーション。いちばんダメな例。「わたしは悲しかった/わたしはすごく悲しかった/わたしはとても悲しかった/わたしは悲しくて涙を流した」ひとつの文章のなかでひたすら似たフレーズが繰り返される。「わたしは怒った/わたしはすごく怒った/わたしは……以下同文」

///「顔うつむけると嗚咽の声を漏らした」とか「肩を震わせた」とか「よろめくようにその場に崩折れた」とか「滂沱の涙を流した」とか「こころの隙間を冷たく乾いた風が吹き抜けた」とか「鼻の奥がじんと熱くなった」くらい言えないとちょいと寂しいし、厳しい。

///まあ、アゴタ・クリストフのようにボキャブラリーがあまりなくても世界的な文学小説を書けてしまうひともいるけど。凡人にはなかなか真似できませんぜ。

///どこかで見たような、うんざりする問答。
質問)どうやったら、語彙・表現の引き出しが増えるんですか?
回答)本をたくさん読みましょう!!
まあ、王道ですから否定はしませんし、最終的にはこの境地にたどり着いてほしいです。でも、今はこんな便利なものもあるンです! ってことで、それをご紹介。

///フィルムアート社『感情類語辞典』。フィルムアート社は「映像・アートを中心に」した書籍を作っている出版社なので、こちらの辞典ももともとは脚本家志望の方に向けたものでしょう。ただ、どんな創作にも使えること間違いなし。

///まずは、人間にまつわる代表的な感情を75種に分類。どれも登場人物たちを活き活き描こうとするなら不可欠なものばかり。メロスの「激怒」、チョロ松くんの「きまり悪さ」、千反田えるちゃんの「好奇心」などなど、個性的、魅力的なキャラクターたちは感情表現が豊か。

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///次にこれらの感情にもとづくさまざまな反応を以下のカテゴリーに分け、ひとつにつき2ページで紹介します。

・外的なシグナル
・内的な感覚
・精神的な反応
・強度の、あるいは長期の感情を表わすサイン
・隠れた感情を表わすサイン

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///まずはAmazonに掲載されているものを。

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///「ほむらはまどかをすごく愛していた」と書きたいのはわかる! でも、それをぐっとこらえ「ほむらの目にはまどかの笑顔以外映らなかった」「まどかの触れたところが痺れたように熱を持った」と書いてみる。あなたに内蔵された表現辞典に新しい一行が書き加えられたのではないだろうか?

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 ///恐怖の場合もそうだね。「なろう」や「カクヨム」の投稿者に「くるみは佐倉先生にびびった」と書くひとはさすがにいない……と信じる。「暗闇の向こうから這い寄る影にくるみの肌はべたついた」「手の汗がとまらず、スコップを取り落としてしまいそうだった」と書けたら、恐怖の深度がひとつ深まった気がするよね。

 

///上記以外にも。

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///本編だけでも充実していて使い出十分。これに加え、欄外に「書き手のためのヒント」がある。おおむね100文字から200文字くらいの豆知識なのだが「キャラクター紹介について」「キャラクターに感情を語らせない」など暇つぶしに読んでいても役に立つこと請け合い。短いから、繰り返し読むのも苦にならないし頭に残る。

///お値段1,600円とやや高めかもしれないが、創作に携わるひとには是非ともおすすめしたい一冊です!
 

感情類語辞典

感情類語辞典