【マンガ】富江の歩いたあとにはぺんぺん草も残らない-『伊藤潤二 恐怖マンガCollection 1 富江 Part2』
///富江の悪夢はまだまだ終わらない。わたしが持っている朝日ソノラマ版でも、あるいは朝日新聞出版版でも『富江』に関しては2巻分が割り当てられています。それだけ富江に関する作品数が多く、また伊藤潤二先生の彼女に対する思い入れも強いってことですね。そうしたわけで今回のご紹介は、1巻に収めきれなかったエピソードを収録する『伊藤潤二 恐怖マンガCollection 2 富江 Part2』。
///『富江 Part2』。腎臓が悪くて入院している雪子のもとへあらわれる富江。何を言い出すかといえば、彼氏と別れろと。あいかわらず前置きなしの言いたい放題、やりたい放題。女王様。でも、それで雪子も「承知しました」と引き下がれるわけもなく。
あ、富江さまを怒らせてしまった……。
///ただ、雪子の彼氏・北山くんも富江に惹かれたというよりは嵌められた口。例のごとく、富江に対する嫌悪感が一気に殺意まで高まってしまう。
キ印に刃物。最強の組み合わせ。
///北山くん、タイーホ。殺された富江の腎臓は雪子へ移植されちゃいます。首を切っても死なない女、富江ですぜ。それはまずいって。で、無事(?)、移植手術は完了。でも、術後経過でとんでもないことが!
うーん、シュール。
///『富江・地下室』。『富江 Part2』の続きよん♪ 雪子の体内で成長しかけた富江は医師たちの手によって無事除去。しかし、雪子の体では富江細胞による乗っ取りがすでに始まっていた。医師たちは富江の細胞をどうにか死滅させられないか、取り出した富江でいろいろ実験するが、むしろ成長を促進。
復活!
///医師のひとりをさっそく誘惑する富江ですが。
微妙に噛み合っていないふたりの会話。
///そうこうしているうちに、富江細胞による雪子の乗っ取りが完了。
元(右)がこれですからね、すごい変貌です。
///『富江・画家』。タイトルページをめくると。バーン!!!!!!!
出落ちかよ!!!
///今度はイケメン人気画家に目をつける富江ちゃん。彼女の美貌を絵にしてほしいと画家に接近。だったら、絵じゃなくて写真にすればいいじゃないかと彼は提案しますが、富江ちゃん、アルゼンチンのメッシばりに華麗にスルー。
富江ちゃんなりに写真はトラウマ。そこが可愛い(1巻『富江・写真』参照)。
///富江をキャンバスに再現しようとするイケメン画家。でも、どうしても巧く描けない。そしてできあがった代物が出落ちの作品。本質を見抜いているのですから、天才といえば天才なんですけどね。ただし富江はご機嫌斜め。彼を無能だと詰り、あまつさえ嘲笑う。カッときた画家はついに。
魔力のせいとはいえ不憫な子。
///『富江・暗殺』。これまたすげータイトルだな。
///見知らぬ男性に襲われる富江。絶命する寸前に駆けつけてくれた哲夫にお願いごとをする。ひと気のない場所に埋めて欲しいと。哲夫は富江との約束を果たしますが、死んだ富江の傷口から新生・富江が出現。
人面疽なんてレベルじゃねーぞ。
///このままにもしておけないので、家へ持ち帰る哲夫。持ち帰るなよ(笑)ところが、この生首が、クッションの上に置けだの、腹が減ったから食事を作れだの、うるせーの! 挙句に、キャビアやフォアグラを食わせろと言い出す始末。わたしも食べたことないよ!(逆ギレ)
個人的にかなりツボ。
///ばらばらにされたパーツごとに再生できる富江。ってことは、いずれは〈わたし〉と〈わたし〉がかち合っちゃうわけですね。どうやら、彼女たちはお互いの分身を殺すことで、これまでそうした問題を解消していたよう。ただし、虜にした男の手によって。だから「暗殺」なのです。
ゴミ箱から命令。哲夫を使って暗殺者を返り討ちにしようとする。
///『富江・毛髪』。富江の特徴といえば、泣きぼくろと美しく豊かな緑髪。彼女の魔力はそんな髪の毛にすら宿っているのでした。
///千絵は、お父さんの書斎で見つけた富江の髪を友達の美貴に見せる。軽率な友達はそれを自分と千絵の頭につけてしまう。
なんちゅうことをしてくれんねん。
///友達は、その後も富江の髪をジャカスカ植毛することで、チリチリ頭が見事なロングヘアに変わる。しかも、容姿まで美しく変身。一方、一本しか植えていない千絵は富江の幻を見るようになり、彼女は彼女で富江の虜になっていく。
女の子も誘惑されちゃうのね。
///もっともっと富江の幻を見たくなった千絵は、一本と言わず、盛大に植毛してしまう。まさに「覚◯剤、その一本が命取り」状態。友達も富江による乗っ取り完了で、全身を髪の毛に食い尽くされてしまう。
千絵ちゃんオーバードーズ。つけるところを間違えている。
///『富江・養女』。『富江・毛髪』では、富江に狂う女の子たちが登場しましたが、彼女のパワーはジジババにすら容赦なし。良家のジジババが養女にした富江に惑わされる。お婆ちゃん、若さのエキスを吸い尽くそうとむしゃぶりつきます。
若い女性の二の腕は好物。
///そんなふたりの変化に不審を覚えたお手伝いさん。ご主人さまへの忠誠から、富江を亡き者にしようとしますが、お爺ちゃんのほうが若干行動派でした。
少々、古賀新一風なお手伝いさん。
もはや手遅れな状態。
///富江が狂わせるのは男だけではなかったのですね。女も年寄りもターゲットにした人間は逃しません。あと残っているのは子供だけ? ただし、彼女自身は理性を持たぬ単なるモンスターというわけではなく、あくまでも自分の美に執着するひとりの女。そういう現実との接点をぎりぎり持っているところが、一連の富江作品の怖さなのです。