【創作のタネ】「おれ」の友達は、中に空気が詰まった人形だった-ジョー・ヒル「ポップ・アート」
【創作のタネ】以下はネタバレになります。
【あらすじ】
「おれ」の友達はユダヤ系の風船人形アーサー・ロス、通称アート。彼は、呑んだくれの父親と幼いころに「おれ」を捨て消息不明になった母親を両親にもつ「おれ」のたったひとりの親友だ。悪ガキどもにさんざんこづかれ、蹴飛ばされているところを助けたことからふたりは仲良くなり、互いの家を行き来し共に時間を過ごすようになる。アートにとって先の尖ったものは厳禁。身体のなかの空気が抜けてしまうと、生命にかかわるからだ。
【創作のタネ】
「おれ」とアートの友情はどんな結末に? アートがいけ好かない父親は、わざと犬を放し飼いにし、修復がきかないほどの手ひどい傷をアートに負わせる。筋力のない自分でも生きていける宇宙に憧れていたアートは、死ぬ前に空高く飛びたいという願望を口にし、「おれ」はそれを叶えてやる。風船人形は主人公の妄想や願望の投影ではなく、ひとりの生きた「人間」として描かれる。常識に一切とらわれない、虚実が曖昧模糊となった物語。
《ひとではない「ひと」が人間らしく振る舞うことで生まれる新たな表現。》