Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【創作のタネ】失墜する父親の「権威」は売れるか?-藤子・F・不二雄「オヤジ・ロック」

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(4)未来ドロボウ

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

大人の背丈ほどもある岩の模型を売って歩くセールスマン。その名も「オヤジ・ロック」。岩は、ときに厳父と見立てられ、ときに慈父と見立てられ、親父の権威が失墜する現代家庭のなかで家族の心の隙間を埋める存在になり得るという。しかし日本の住宅事情を鑑みたとき、場所を塞ぐこんなガラクタを喜んで買う客などいない。公園で出会ったもうひとりのセールスマンもまた、自分にもとびっきりの商品があるのに売れないと愚痴をこぼす。

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【創作のタネ】「おれ」の友達は、中に空気が詰まった人形だった-ジョー・ヒル「ポップ・アート」

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

「おれ」の友達はユダヤ系の風船人形アーサー・ロス、通称アート。彼は、呑んだくれの父親と幼いころに「おれ」を捨て消息不明になった母親を両親にもつ「おれ」のたったひとりの親友だ。悪ガキどもにさんざんこづかれ、蹴飛ばされているところを助けたことからふたりは仲良くなり、互いの家を行き来し共に時間を過ごすようになる。アートにとって先の尖ったものは厳禁。身体のなかの空気が抜けてしまうと、生命にかかわるからだ。

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【創作のタネ】尻尾をもつ名指揮者の正体とは-スティーヴン・ビンセント・ベネー『猫の王様』

猫の影 (恐怖と怪奇名作集6)

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

トミーは、オリエンタルな雰囲気に包まれたビブラカナルダ王妃に片想い。社交界の華である。一方で、名指揮者として名高いティボーなる人物もまた社交界の話題をさらっている。王妃と共に彼の演奏会へ同行したトミーは、ふたりが恋仲にならないかと気が気でない。そんなティボーには面妖な特徴があった。尻尾を生やし、それでタクトを振るのだ。あるときトミーは、やぶけた靴下からあらわれたティボーの毛深い地肌を目撃してしまう。

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【創作のタネ】隣席から耳元に囁きかける幽霊-ジョー・ヒル「二十世紀の幽霊」

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

アレックが支配人を務める映画館には若い女の幽霊が出た。最初は普通の姿をして映画に夢中になっているが、次第に、鼻血を流して、のけぞり、白目を剥く。アレックが初めて女の幽霊に出会ったのは15歳のとき。入場料を支払わず忍び込んだ席の隣りに彼女はいた。驚愕した少年アレックがホールへ飛び出すと、そこに当時の支配人がいる。彼は少年の言葉を信じ、入場料を返すと申し出るが、アレックはむしろ映画館で働かせてくれと申し出る。

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【創作のタネ】傑作小説の作者に会いたい、遭いたい-ジョー・ヒル『20世紀の幽霊たち』

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

【創作のタネ】以下はネタバレになります。 

【あらすじ】

エディ・キャロルは、優れたホラー小説を集め、『アメリカ年間ホラー傑作選』として刊行するアンソロジスト。すっかり仕事がマンネリになりうんざりしているとき、傑作だという一本の作品を紹介される。それは、ある女性が異常者に残酷な仕打ちを受け、心身の傷が癒えかけたときまたもや異常者に捕まるところで終わる救いのない物語だった。キャロルは無名の作者に才能を感じ、彼に会おうとするが、その行方は杳として知れなかった。

【創作のタネ】

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