Just Melancholy

140字の小説をほそぼそと流します。本(ナンデモ)を読むことと旅(京都と外国)に出ることと文章を綴ることが大好きです。

【マンガ】フツーの女子中学生がいちばん可愛い-『千と万』

千と万(1) (アクションコミックス(コミックハイ! ))

 

 中学生になりたての詩万ちゃんはお父さんとふたり暮らし。こころはともかく、体だけはどんどん大人になっていくお年頃。初潮が来てしまったことで、自分がオンナであること、オトナになることを否が応でも自覚せざるを得ません。でも、オトメゴコロを多少なりとも理解してくれるお母さんがいないので、お父さんの千広と好むと好まざるとにかかわらず、うまくやっていかなければなりません。そんなふたり、『千と万』。


 お小遣いをくれるのに駆け引きするお父さん、ヤクルトをズルズル飲むお父さん、自分の知らないところで彼女をネタにブログを書くお父さん、一度掴んだドーナツを食べずにほかのドーナツに手をつけるお父さん。千広のすることなすことにいちいちカチンとくる詩万ですが、お隣さんの波ちゃんやお父さんの妹、すなわちおばさんの那由ちゃん、中学の同級生たちがうまく彼女の圧力調整弁になってくれているのでひとまず安心です。


 でも、千広にもいいところがないわけではありません(当然ですが)。内緒で詩万のことをブログに綴っていた千広。そのことが彼女にばれて猛抗議されても、悪気がない分あまり重く受けとめません。ですが、詩万の大人としてのきめ細やかな配慮を目の当たりにして、初めて自分の間違いに気付くや土下座で彼女に謝罪します。親だとしても、いや、親だからこそ、謝るときは誠実でなければなりません。お父さん、えらい!


 作者の関谷あさみ先生は、そちらの世界ではそこそこ名を知られている方です。そちらの世界って、有り体に言うと、成年コミック。そこでアクロバティックな体位の女の子たちを、しかも可愛らしく描く修行を積まれたせいでしょうか、作画には異様な安定感があります。詩万ちゃんの微妙なこころの揺れなんかも、すごく上手に表情や仕草にあらわれていて、本当に可愛いです。わたしは昨年のベスト漫画にカウントしています。


 ここのところ日常系のマンガ作品は乱立気味でしたが、女性目線で描かれた本作は地味に良質な一品だと感じます。可愛い女の子の「生態」を知りたいひとはもちろんのこと、ハイテンションなマンガに少々お疲れのとき、こちらなどはいかがでしょう。うん、風邪をひき家でゆっくりしなきゃいけないときなんかにもってこいの作品かもしれません。

 

 関谷先生ご自身のエピソードが描かれているのか、詩万ちゃんの視点や動きに不自然さがありません。今現在「お父さん」のひとが読むとぞっとしたり、せめてうちの娘もこのくらいならなぁぁぁ、と詩万ちゃんに憧れたりするかも???書店だと扱っていないところもあるので、Amazonなどで取り寄せるのがベストかな。まだ二巻までしか出てませんが気になる男の子も登場してきて、これからの展開に期待大。お父さんとふたり暮らしの中学生少女の日常は今日も続いていくのです。